中国初の歴史書「史記」に登場する医師「扁鵲」(へんじゃく)。
病人を見ると一目で内臓の病変が見え、特に脈診の達人として名を馳せ、
諸国を遍歴して医療を施した名医だったそうです。
この扁鵲と肌に関係する話を紹介します。
斉の国で王のもてなしを受けた扁鵲は、顔色を一見して王に病気のあることを知り、
「今病気は肌にとどまっていますが、早く治療なさいませんと、どんどん進行します」
と進言します。
が、王は、扁鵲が治療費欲しさに嘘を言っていると、その言葉を信じません。
おそらく王本人の自覚としては健康だったのでしょう。
扁鵲は会うたびに、病気が肌から血脈に進行したこと、
血脈から胃腸に進行したことを指摘するものの、王は立腹するばかり。
そして、15日後、王の顔を遠くから見ただけで素早く退出し、逃げ去ったのです。
「病気が体表にある時は湯液(薬)や膏薬が効きます。
血脈に進行した時は鍼が効きます。胃腸に進行した時は薬酒が効きます。
しかし、骨髄まで及んでしまうと、もう神様でもどうしようもありません」
その5日後、王の身体が痛み出し、慌てて扁鵲を探したが後の祭り・・・
名医の扁鵲でも治せない「扁鵲の六不治」は次の通り。
①驕り高ぶって道理をわきまえない人
②身体を粗末にし、財産を重んじる人
③衣食の節度を保てない人
④陰陽ともに病み、内臓の気が乱れきった人
⑤痩せ衰えて薬が服用できない人
⑥巫(おがみやさん)を信じて、医を信じない人
この話からも、東洋医学・養生のひとつの哲学思想として、
「未病を治す」という考え方が存在していることが分かります。
名医や聖人は病気を治すのではなく、未病を治すものです。
病気になってから薬を飲むというのは、のどが渇いてから井戸を掘るようなもの、
遅すぎるのです。
肌のトラブルは未病のサインととらえ、これ幸いとして、
日々の生活を改める機会として病気にならないようにするとよいでしょう。
肌トラブルがすべて病気の初期症状とは言いませんが、
食事の方偏り、胃腸の荒れ、睡眠不足、ストレス・・・
色々な症状や原因を示唆していることは事実です。
また、今まで何度かご紹介しました東洋医学の五行理論では、
「皮膚」は防衛大臣である「肺・大腸」の状態を反映し、
感情では「悲しみ」と関係が深いとされています。
悲しみの感情を健全に表に出せず引きずっていたり、
浅い呼吸、空気の汚れ、大腸に負担をかける食事は肌トラブルの原因となります。
西洋医学の治療や鍼灸治療、各種のお薬やサプリメントは確かに効果はあります。
が、やはりそれより大切なのは、扁鵲が6不治であげていたように、
時節に応じた衣食の節度や、十分な休息、そして運動です。
新しい年とともに生活を見直す、新しい習慣、始めませんか?
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